任意整理後に繰り上げ返済や一括返済するメリットと意味がないケース

任意整理は今後支払うべき利息をカットして、3年~5年程度かけて借金を返済する手続きであり、今までの返済額よりも減らせるため、毎月の負担をおさえることができます。
毎月の返済額が減ることで貯金できるようになったり、ボーナスが入ったりすると、借金を早く完済するために繰り上げ返済を検討する人もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論として、任意整理後に繰り上げ返済をして返済期間を短くすることや、残りの借金を一括返済で完済することはできます。
しかし、状況によっては繰り上げ返済をする意味がないケースがあるので、繰り上げ返済でメリットを得る方法についてあらかじめ知っておくべきです。
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任意整理後に繰り上げ返済するメリット
任意整理した後は、3年~5年程度の返済期間で借金を返済することになりますが、貯金して返済できるお金ができたり、ボーナスなどの臨時収入を得たりなど、まとまった金額を返済にあてられる場合は繰り上げ返済することができます。
繰り上げ返済をすることで、返済回数を少なくすることができます。たとえば、月々3万円の返済を60回おこなうケースで、30万円を繰り上げ返済すると、本来支払うべき1回分と加えて9回分の返済ができます。
通常通り1回分(3万円)を返済したケース
残りの返済回数 | 残りの返済額 | |
返済前 | 60回 | 180万円 |
返済後 | 59回 | 177万円 |
30万円を繰り上げ返済したケース
残りの返済回数 | 残りの返済額 | |
返済前 | 60回 | 180万円 |
返済後 | 50回 | 150万円 |
繰り上げ返済をすることで返済回数が少なくなって、完済までの期間が短くなります。早く完済することで次のような2つのメリットを得ることができます。
- 借金の返済から早く解放される
- ブラックリストに載る期間を早めることができる
借金の返済から早く解放される
任意整理後の繰り上げ返済をすることで、返済期間が短くなるので、いち早く借金の返済から解放されます。
任意整理をしたことで、負担の大きかった借金の返済がラクになりますが、長いあいだ返済を続けなければいけないので、精神的に負担がかかることは変わりありません。
繰り上げ返済をすることによって、完済までの期間を短くすることができるので、借金の返済による精神的なストレスからいち早く解放することができます。
ブラックリストに載る期間を早めることができる
ブラックリストは任意整理をした借金を完済してから5年のあいだ載ることになります。たとえ繰り上げ返済をしても完済してから5年という期間が短くなることはありません。
しかし、返済期間が短くなれば、ブラックリストが消える日を早めることができます。たとえば、5年返済する予定だった借金を繰り上げ返済によって3年で完済できた場合は、5年で完済できたケースとくらべて2年早くブラックリストが消えます。
ブラックリストが消えると、借り入れやクレジットカード、ローンの審査が通る可能性が高くなるので、新たに借り入れしたい人やクレジットカードを発行したい人などは繰り上げ返済をして早めに完済するべきです。
実際に繰り上げ返済するときの手順
繰り上げ返済には、借金の残高をすべて返済する一括返済と、毎月の返済額よりも多く返済する一部繰り上げ返済の2パターンあります。
どのパターンも手順は一緒であり、返済先の貸金業者に支払い金額を伝えてから指定された銀行口座に振り込めば繰り上げ返済できます。
一括返済をする場合は、余分に支払うことのないように、貸金業者に借金の残額を確認してから、銀行振り込みをしてください。
弁護士・司法書士事務所に返済代行を依頼している場合
返済代行は任意整理した借金を貸金業者に直接振り込むのではなく、弁護士・司法書士事務所にお金を送ることで貸金業者へ代わりに返済してくれるサービスです。
返済代行を依頼していて繰り上げ返済をしたい場合は、弁護士・司法書士に連絡をしてください。弁護士・司法書士から貸金業者へ繰り上げ返済する旨を連絡してもらってから、実際に繰り上げ返済することになります。
繰り上げ返済をしても意味がないケースと解決法
繰り上げ返済をしてから完済するまで順調に返済を続けられれば問題はありません。
しかし、複数社ある借金のうち一部の貸金業者のみを優先して繰り上げ返済した後に、収入がなくなったなどの理由で返済ができなくなると、自己破産に切り替えるときに問題が起こります。
債務整理中は「債権者を平等に扱わなければいけないという債権者平等の原則」があって、複数社ある借金のうち一部の会社だけを優先してはいけないことになっています。
自己破産に切り替えたときに、一部の会社を優先して完済したことによって「偏頗弁済へんぱべんさい」をしたから債権者を平等に扱っていないと判断される可能性があります。
裁判所によって偏頗弁済だと判断された場合は、自己破産の中でも多額の費用がかかる管財事件でもって手続きを進めることになるので、無理をして繰り上げ返済をしても意味がありません。
有効に繰り上げ返済する方法
複数回にわけて一部繰り上げ返済をするのは得策ではないので、返済にあてられるお金が増えたときは借金を完済できるだけの金額が貯まるまでは、任意整理で決まった和解条件の通りに返済を続けるべきです。
繰り上げ返済をせずに貯金しておくことで、仮に収入が減って返済が苦しくなったとしても、貯金から返済にあてることができます。
また、自己破産の手続きに切り替わったとしても、繰り上げ返済をしていなければ債権者を平等に扱ってきたと主張することができるので、繰り上げ返済をしていなければ費用を安くおさえられる同時廃止事件で進めることができます。
完済できる時期が来るまでは、繰り上げ返済をしないで返済を続けてください。その後、一括返済で借金を完済できれば、返済期間を短くできて、ブラックリストが消える時期を早めることができます。
返済が苦しい借金をいち早く完済するなら専門家に相談
任意整理は返済期間を延ばすことで毎月の返済額が減らせるメリットがあるだけでなく、今後支払うべき利息をカットして借金の返済総額を減らすことができるので、いち早く完済したい人にとってもメリットが得られる手続きです。
任意整理をするときには原則として返済期間を3年~5年にすることになりますが、返済の負担が減って貯金できる余裕ができたり、ボーナスなどの臨時収入があったりすれば、繰り上げ返済で返済期間を短くできます。
実際に、長いあいだ返済を続けているからいち早く完済したくて任意整理をする人もたくさんいるので、返済がくるしい借金をいち早く完済したい人は債務整理に強い弁護士・司法書士に相談するべきです。
任意整理後の繰り上げ返済についてよくある質問
- 任意整理した後に繰り上げ返済はできる?
-
毎月の返済額よりも多くの金額を支払いたい場合は、貸金業者または事務所に連絡することで、繰り上げ返済できます。また、繰り上げ返済で得られるメリットはいくつかあるので、「任意整理後に繰り上げ返済するメリット」をご確認ください。
- 任意整理の一括返済のやり方は?
-
返済先の貸金業者に現在の残高を確認してから支払い金額を伝えてから指定された銀行口座に振り込めば繰り上げ返済できます。くわしくは「実際に繰り上げ返済するときの手順」をご確認ください。
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